「自分のお葬式は、しなくていい。お墓も、なくていい」
自分がいなくなったあとの形には、こだわりがない。お金や手間をかけてほしいとも思わない。その気持ちを、立派な理由に言い換える必要はありません。
ただ、その希望が自分の頭の中にあるだけでは、家族には分かりません。スマホに書いてあっても、家族が開けなければ、必要なときに読めません。
「話しておこう」で終わらせず、希望を書く、読める形で残す、置き場所を伝える。今日は、そこまで具体的にしてみます。

まず「何をしなくていいのか」を一枚に書く
エンディングノートを最初から一冊埋めなくても、葬儀とお墓の希望だけなら一枚から始められます。紙でも、普段使っているメモでもかまいません。
「何でもいい」だけでなく、望まないこと、任せられること、まだ決めていないことを分けて書きます。
葬儀について:葬儀・告別式は行わないことを希望します。家族で集まって思い出を話すかどうかは、みんなに任せます。
お墓について:自分のためにお墓を新しく建てることは望みません。
ご遺骨について:海への散骨が気になっていますが、方法や依頼先はまだ調べていません。契約はしていません。
知らせてほしい人:連絡先リストは○○に保管しています。
相談済み・契約済みのこと:現時点ではありません。
書いた日:○年○月○日。
これは一例です。「家族が集まる場もつくらなくていい」という希望なら、そのように書いてかまいません。理由を添えたければ一言。うまく説明できなければ、希望だけでも残せます。
「散骨が気になる」と「散骨を依頼済み」は別です。希望、検討中、相談済み、契約済みを区別しておくと、何をこれから確かめるのかが分かります。契約している場合は、依頼先の名称と契約書の保管場所も別に残します。
お墓を持たない希望があっても、ご遺骨の具体的な行き先や手順は別に確認が必要です。散骨や樹木葬を選ぶ場合は、候補の自治体・墓地管理者・事業者へ条件を確かめてから決めます。この記事のメモは、その確認や契約の代わりになるものではありません。
終活アプリを使うなら、家族が読めるところまで確かめる
書き直しやすい方法がよければ、終活アプリやデジタルのエンディングノートも候補です。選ぶときは、記入欄の多さだけでなく、残した希望が相手に届くかを確認します。
- 共有する相手を選べるか。今から共有する情報と、見せたくない情報を分けられるか。
- 本人のスマホを開けなくても読めるか。家族自身の端末で閲覧する方法や、もしものときの手続きはあるか。
- 紙やPDFへ書き出せるか。機種変更やサービス終了に備えて、手元に控えを残せるか。
- いつ、どの条件で届くか。自動通知や死後の情報開示を使う場合、受取人の設定、確認手続き、必要な申請は何か。
これらの機能がどのアプリにもあるわけではありません。使うサービスの公式案内で確かめます。「登録したから、何かあれば自動で伝わる」とは考えず、共有相手にも読めるかを確認してもらいます。
国民生活センターは、本人のスマホ等のパスワードが分からず、遺族が内容の確認や手続きに困る相談を紹介しています。デジタル終活の案内
葬儀の希望だけは紙にも出しておく、といった分け方もできます。口座や医療情報、パスワードまで一枚の共有メモへまとめる必要はありません。見せたい情報だけを、見せたい相手へ渡せる形にします。
紙から始めたい場合は、自治体などが公開するエンディングノートを使う方法もあります。大阪市の案内では、葬儀・お墓の希望を記す欄や、必要な部分だけを印刷する使い方を紹介しています。掲載ノートは旧版のため、同じページにある最新版への案内も確認してください。
「書いたよ」に、置き場所を一言添える
書き終えたら、信頼できる家族や身近な人へ、内容と保管場所を伝えます。
葬儀とお墓について、今の希望を書いたよ。紙は書斎の青いファイルに入れてある。もしものとき、葬儀を決める前に見てほしい。今、一緒に読んでもらえる?
デジタルなら、こう伝えることもできます。
希望を記録したアプリの共有設定をしたよ。あなたのスマホから読めるか、一度確かめてほしい。葬儀の希望だけは紙にも出して、青いファイルに入れてある。
「机のどこか」「スマホの中」より、場所やファイル名まで具体的に。メモの存在を知らせる相手と、葬儀の相談をする相手が別なら、誰から誰へ伝えてもらうかも話しておきます。
一緒に読む時間が取れれば、希望の伝わり方を確かめられます。家族が「少し集まる時間はほしい」と思うことも、同じく形にこだわりがないこともあるでしょう。
聞くことは、相手の希望をすべて引き受ける約束ではありません。本人の希望を変える前提にせず、「私の希望はここに書いたとおり。あなたはどう思う?」と聞けるところまででかまいません。
今は話す相手がいない場合も、希望と保管場所をまず自分で整理できます。必要なら、住んでいる自治体に終活相談や情報の登録制度があるかを問い合わせます。支援内容や対象は自治体ごとに異なります。
遺書・エンディングノート・遺言書を、ひとまとめにしない
「遺書を書いておけばいいのでは」と考える方もいるかもしれません。ここでは、家族へ伝える手紙や希望のメモと、法律上の遺言書を分けて考えます。
エンディングノートは、葬儀やお墓、連絡先、家族へのメッセージなどを書き残すために使えます。ただし、記入するだけで、法律上の遺言と同じ効力が生じるわけではありません。
財産を誰にどう残すかなど、法的な効力を持たせたい内容は、遺言書としての要件も含めて別に検討します。また、葬儀や埋葬方法の希望は、遺言書に書いたから必ずそのとおり実行される、ともいえません。東京新宿法律事務所の解説
まずは希望を伝えるメモをつくり、法的な手当てや実行を誰かに依頼する契約まで必要なら、弁護士などの専門家へ相談する。書き残すことと、実行の手配は分けて進めます。
更新したら、渡した相手にも知らせる
一度書いた希望を、ずっと変えない必要はありません。気持ちや暮らしが変わったら、日付をつけて更新します。
紙とアプリの両方に残しているなら、内容をそろえます。前に渡した人へも「○月○日に書き直した。こちらが今の希望」と伝え、古い控えとの取り違えを避けます。
今日やることを一つ選ぶなら、まず葬儀とお墓の希望だけを一枚に書く。それができたら、保管場所を一人に伝える。
お葬式も、お墓もいらない。その気持ちを尊重してもらうために、何を望まないのか、何は任せられるのかを、必要なときに読める形で残しておきませんか。
参考情報
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」(2026年6月3日):本人の意向を踏まえた事前の話し合い。
- 国民生活センター「今から考えておきたいデジタル終活」(2024年11月20日):端末・アカウントへアクセスできない問題と、情報を残す備え。
- 大阪市「未来につなぐわたしの相続 エンディングノートについて」:葬儀・お墓を記す欄と、必要な部分から作成する方法。
- 横須賀市「横須賀市の終活支援とは何ですか」:保管場所などを登録する自治体の制度例。全国共通の制度としては扱っていません。
- 東京新宿法律事務所「葬儀や埋葬方法は遺言書で指定できない!」:葬儀・埋葬に関する希望と遺言の法的効力の区別。
確認日:2026年9月6日。会話文・希望メモ・アプリ選びの確認項目は、編集部が作成した例です。特定アプリの機能や、書き残した希望の実現を保証するものではありません。


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